診療573日目、あのコンクールFが2型糖尿病に効果アリ?!話題の論文を徹底深掘り!
2024年9月2日
こんにちは、椎名町駅えがお歯科です。
本日はコンクールFの話題です!
歯科医院だけでなく、薬局やバラエティショプなど街でも購入できるお店が増えていますね。
2型糖尿病にコンクールFの使用はどう影響する?
糖尿病の主要な合併症の一つに歯周病があり、相互に悪影響を及ぼすことは周知の事実である。
歯周病の発症には歯周病菌の存在が関与しており、これまでにコンクールFを用いた洗口を行うことで、歯周病菌を減少させることが報告されている。
一方で、2型糖尿病患者がコンクールFを用いることによって、歯周病や糖尿病の病状にどのような影響を及ぼすかは明らかにされていなかった。
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洗口によってレッドコンプレックスの細菌種数とHbA1c値に変化があるかどうかを検証
大阪府内の糖尿病クリニックを受診中の2型糖尿病患者173人に対し、半年間は水道水で1日1〜3回、その後半年間はコンクールFを用いて1日1〜3回洗口を行わせた。
この研究期間中、被験者がクリニックへ訪問する際は、1~2ヶ月ごとに唾液検体を6~12回採取。そして唾液検体から細菌DNAを抽出し、3つのレッドコンプレックス細菌種を検出した。さらに、血液検体も採取し、HbA1c値を測定した。
そして、水またはコンクールFで洗口した後のレッドコンプレックスの細菌種数の変化に関連する因子を調査するため、以下の5つの臨床因子に基づいて患者を分類。
① 年齢
② ベースラインのHbA1c値
③ 性別
④ 罹病期間
⑤ ベースラインのボディマス指数(BMI)
HbA1c値の変化についても、同様の因子について評価した。
コンクールF使用群では、68歳以下のレッドコンプレックス細菌種数が有意に変化
1日1回以下の洗口を行った患者(n=12)では、水またはコンクールFによる洗口のいずれにおいても、レッドコンプレックスの細菌種数の有意な減少はみられなかった。しかし1日2回(n=80)または1日3回(n=81)洗口を行った患者においては、水による洗口においては細菌種数の減少がみられなかったものの、コンクールFによる洗口では細菌種数が有意に減少した。
そのため、最終的には1日2回または3回洗口を行った161名の患者を対象とした。HbA1c値に関しては、水とコンクールFによる洗口のいずれも有意に変化しなかった。
ここでは、レッドコンプレックスの細菌種数とHbA1c値に分けて、臨床因子に関する研究結果を示す。
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レッドコンプレックス細菌種数の変化
① 年齢
年齢の中央値で患者を2グループに分類(68歳以下:n=83、69歳以上:n= 78)。
コンクールFによる洗口においては、68歳以下のグループの方が69歳以上よりも有意にレッドコンプレックスの細菌種数が少なかった(P<0.05)。
② HbA1c値
ベースラインのHbA1c値の中央値で患者を2グループに分類(7.4%以下:n=92、7.5%以上:n=69)。
コンクールFで洗口した後、2グループ間でレッドコンプレックスの細菌種数の変化に有意差なし。
③ 性別
性差(男性:n=105、女性:n=56)を調べたところ、コンクールFによる洗口においては、レッドコンプレックスの細菌種数は男性の方が女性よりも有意に低かった(P<0.05)。
④ 罹病期間
罹病期間の中央値で患者を2グループに分類(13年以下:n=87、14年以上:n=74)。
コンクールFで洗口した後、2グループ間でレッドコンプレックスの細菌種数に有意差なし。
⑤ BMI
患者をベースラインBMIによって正常と太り過ぎ(<25.0kg/m2:n=110、≥25.0 kg/m2:n=51)のグループに分類。
コンクールFで洗口した後、2グループ間でレッドコンプレックスの細菌種数に有意差なし。
※ 水による洗口においては、① 〜 ⑤ のどの因子においても有意差がなかった。
HbA1c値の変化
① 年齢
コンクールFによる洗口後は、68歳以下のグループの方が69歳以上よりもHbA1c値が0.06±0.07%有意に低かった(P<0.05)。
② HbA1c値
コンクールFによる洗口後は、7.5%以上のグループの方が7.4%以下よりもHbA1c値が有意に低かった(P<0.05)。しかしHbA1c7.5%以上のグループにおいては、倫理的な観点から血糖コントロール改善のための医療的介入を行っていたため、コンクールFによる改善とは認められなかった。
③ ④ ⑤ については、コンクールFによる洗口後の変化に各グループ間で有意差はなく、水による洗口後の変化は ① 〜 ⑤ すべてのグループで有意差がなかった。
よって、コンクールF使用群においては、68歳以下の糖尿病患者でレッドコンプレックスの細菌種数およびHbA1c値が有意に減少する傾向が示された。
今回の研究で考慮するべき点
今回の研究では、以下の4つのポイントについて考慮するべきと、論文中で言及されている。
① 研究では、PCR法によって口腔内に存在する歯周病原細菌を検出したのみで、細菌の正確な数や量については計測されていないこと
② 研究は内科クリニックで実施されたため、歯周ポケットの深さなどの口腔内データは収集できなかったこと
③ 各患者で同時に唾液を採取できず、唾液採取前の飲食や口腔清掃などの口腔環境を厳密に標準化できなかったこと
④ コンクールFによる洗口が及ぼすレッドコンプレックスの細菌種数の変化と血糖コントロールへの影響については、患者によってさまざまな個体差があったこと
特に④の血糖コントロールについては、他の全身疾患や投薬などの要因が個体差に関連している可能性が考えられる。今後2型糖尿病患者におけるクロルヘキシジン配合洗口液の影響を判断するためには、さまざまな要因を考慮して、さらなる研究を計画する必要があると締めくくった。