診療902日目、歯磨きの質を高める、利き手との上手な付き合い方
2026年2月7日
こんにちは、椎名町駅えがお歯科です。
「利き手じゃない手」で歯磨きすると脳が活性化する?
――歯磨きの質を高める、利き手との上手な付き合い方
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毎日何気なく行っている歯磨き。
けれど、「ここ、どうしても歯ブラシが当てにくい」「奥歯の裏側がうまく磨けている気がしない」と感じたことはありませんか。
実はその感覚、気のせいではありません。
歯磨きのしやすさや磨き残しの出やすさには、利き手が大きく関係していることがわかっています。
さらに近年では、利き手ではないほうの手を使うことで、脳が活性化する可能性も注目されています。
今回は、利き手と歯磨きの関係を科学的視点から整理し、日常に活かせる実践的なポイントを紹介します。
左利きは少数派? 利き手と歯磨きの関係
世界人口のおよそ10%が左利きと言われています。
日用品の多くは右利き仕様ですが、歯ブラシは基本的に左右どちらの手でも使用可能です。
ただし、「使える」と「きちんと磨ける」は別問題。
研究では、利き手側の奥歯の裏側(舌側)に磨き残しが多いことが明らかになっています。
例えば右利きの人の場合、右下の奥歯の舌側は特に磨き残しやすい部位です。
なぜ利き手側なのに磨きにくいのか?
理由は、歯磨きという動作の複雑さにあります。
利き手側の奥歯を磨くには、
- 肩
- 肘
- 手首
- 指先
といった複数の関節と筋肉を同時に調整する必要があります。
特に臼歯部の舌側は、視認性が低く、歯ブラシを反転させる動きも必要になるため、
どうしても単調な動きになりがちです。
「利き手だから上手にできる」と思いがちですが、実は最も難易度が高いエリアでもあるのです。
非利き手で磨けば、磨き残しは減る?
ここで浮かぶ疑問が、
「それなら、磨きにくい場所は反対の手で磨けばいいのでは?」という考えです。

この疑問に対し、2023年に東京都リハビリテーション病院の研究グループが興味深い報告をしています。
利き手と非利き手で歯磨きを行い、PCR(Plaque Control Record)という指標で歯垢の除去率を比較したところ、
- 利き手:約63.5%
- 非利き手:約49.5%
と、非利き手のほうが有意に磨き残しが多い結果となりました。
特に磨き残しが多かった下顎臼歯舌側では、非利き手でも改善は見られず、
「手を変えただけでは、磨きにくさは解消されない」ことが示唆されました。
歯磨きの精度を上げる鍵は「利き手の熟練度」
一般に、利き手は非利き手よりも
- 細かな動作
- 力のコントロール
- ブラシの角度調整
が得意です。
そのため、磨きにくい部位ほど、利き手でのブラッシング技術を高めることが重要になります。
非利き手に持ち替えることは、清掃効率の面では万能な解決策ではありません。
それでも注目される
「非利き手」の意外な効果
では、非利き手で歯磨きをする意味はないのでしょうか?
答えは「いいえ」です。
2012年、西九州大学の研究では、利き手と非利き手で細かな作業を行った際の前頭葉の血流量を比較しました。
その結果、非利き手を使った作業中は、脳の酸素化ヘモグロビン(HbO₂)が有意に増加していました。
これは、慣れない動作によって注意力が高まり、脳がより活発に働いている状態を示しています。
歯磨きも、手と口を連動させる繊細な運動です。
非利き手で行うことで、同様の脳刺激が得られる可能性が考えられます。
脳と感情にも影響する可能性
非利き手の使用は、運動野だけでなく、その周囲にある感情調整に関わる領域にも刺激を与えるとされています。

その結果、
- 集中力の向上
- 感情のコントロール
- 日常動作のマンネリ化からの脱却
といった効果が期待されます。
実際、非利き手を積極的に使う考え方は、リハビリ医療の現場でも応用されています。
リハビリ現場でも使われる「歯磨き」
CI療法(制約誘導運動療法)では、あえて健康な手の使用を制限し、
麻痺のある手を集中的に使うことで機能回復を促します。
この療法の課題の一つに、「歯磨き」が含まれています。

理由は、日常生活に密着し、かつ細かな運動を必要とするためです。
歯磨きは、単なる清掃行為ではなく、脳と身体をつなぐ重要な動作でもあるのです。
利き手を活かした、現実的な歯磨きのコツ
最後に、今日から実践できるポイントをまとめます。
- 磨き残しやすい「利き手側の奥歯の裏側」から磨き始める
- 鏡を見ながら、歯ブラシの角度を意識する
- 非利き手で磨く場合は、力を入れすぎず、時間に余裕のあるときに
- ゲーム感覚で取り入れ、無理なく続ける
基本は利き手で丁寧に磨くこと。
そこに時々、非利き手を取り入れることで、脳への刺激という“プラスα”を楽しむ。
歯磨きは、健康習慣であり、セルフケアであり、脳トレでもあります。
毎日のルーティンを、少しだけ意識的に変えてみませんか?






