診療468日目、脳科学者が「高齢者は真っ先にやるべき」とすすめる習い事とは?
2024年4月11日
こんにちは、椎名町駅えがお歯科です。
1度体験すると脳が喜び、生涯続けられる 脳科学者が「高齢者は真っ先にやるべき」とすすめる習い事とは?
高齢者が生き生きと過ごすために、おすすめの趣味は何か。脳科学者の瀧靖之さんは「音楽は聴くだけでなく、演奏するといい。自らの手で音楽を『創造』することで、脳の『報酬系』と呼ばれる領域が活発になり快感を覚えるうえ、脳の認知機能を司る部分を刺激し、身体の協調運動をつかさどるさまざまな脳領域も活性化する」という――。
※本稿は、瀧靖之『70代でも老けない人がしている 脳にいい習慣 「ほんの少し」でこんなに変わる!』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
音楽は聴くだけでなく、自ら演奏する
音楽が嫌い、という人はあまりいないでしょう。いつでも聴けるし、さしてお金もかかりません。手っ取り早い趣味としては、最適だと思います。
さらに望ましいのが、聴くだけではなく、自ら演奏することです。まったく下手でもかまわないので、チャレンジすることをおすすめします。
私も趣味でピアノを弾きますが、当初はどうしようもなく下手でした。逆にそれが悔しくて、必死に練習したのです。
実は子どものころに少し習っていたのですが、シャープ(#)やフラット(♭)のある曲がまったく弾けず、早々にあきらめていました。
しかし二十数年を経て、ふと再チャレンジしてみようと思い立ったのです。ある研究発表によっていただいた賞金で、電子ピアノを買ったのがきっかけでした。その後、自宅を建てた際に妻が実家からアップライトピアノを持ち込み、すっかりハマってしまいました。
もちろん、最初は初心者同然でしたが、ずっと弾いていれば昔の感覚を思い出すものです。譜面も読めるし、両手もバラバラに動きます。
苦手意識があったからこそ、逆にそれを克服してやろうという気にもなりました。結局、ゼロの状態からスタートするより、上達はずっと早かったと思います。
弾けば弾くほどモチベーションが上がる
それに、子どものころは先生の指示にしたがって仕方なく弾くだけでしたが、今は当然ながら好きな曲を自由に選べます。このあたりも、大人の勝手気ままな趣味ならではの楽しみ方でしょう。
おかげで、今でもレベルはたかが知れていますが、少なくとも子どものころよりは上手に弾けます。
それに、ひとたび身につけておけば、この先もずっと弾き続けることができるでしょう。よほどのブランクを開けないかぎり、もっとうまくなることはあっても下手になることはありません。
だから弾けば弾くほど、よりモチベーションが上がっていくわけです。楽器の魅力は、こういうところにあります。
ピアノが億劫なら、ギターなどの弦楽器でも管楽器でも打楽器でもいい。あるいはオカリナやブルースハープも渋い。聴くだけではなく自ら奏でる快感は、一度経験すればわかるはずです。
楽器演奏が脳をとことん刺激する
楽器の演奏自体、脳の活性化にきわめて有効です。
まず指先をはじめ、肘、肩、体幹、それに脚まで動かす全身運動なので、脳のさまざまな領域を同時に刺激します。さらに譜面を見ながら演奏するとなると、脳の認知機能までフル稼働します。
では、ここまで脳を使って疲れるかといえば、まったくそんなことはありません。経験のある方ならわかると思いますが、ずっと弾いていたくなる。これは、自らの手で音楽を”創造”することで、脳の「報酬系」と呼ばれる領域が活発になり、快感を覚えるためです。
このときに放出されるのが、神経伝達物質「ドーパミン」です。それがまた、前頭葉をはじめ脳の認知機能を担う部分を刺激するのです。
加えて、ピアノは両手を別々に動かし、さらには両足も使って演奏しますので、身体の協調運動をつかさどるさまざまな脳領域も活性化します。脳にとっては「いいこと尽くし」と言えるでしょう。
ついでに言えば、ピアノは単に弾くだけが楽しみではありません。例えば練習している曲があったとしたら、プロの演奏をCDや動画配信サイトなどで聴き、その表現方法を頭に叩き込むのも楽しみの一つです。
そして次にピアノに向かうとき、それを”耳コピー”で再現してみる。こういう聴き方ができるのも、楽器を趣味にしている人の醍醐味でしょう。今では出張の際など、ちょっとした空き時間があれば、これに費やすのが常です。
楽器にかぎった話ではありません。
例えばスポーツでも、絵画などの芸術系でも、かつて多少なりとも経験したことがあるなら要領はつかんでいるはずです。ゼロからスタートするより、上達は早いと思います。
苦手意識があるなら、むしろ「リベンジしてやろう」と”闘志”を燃やすことで、モチベーションに変えられるのではないでしょうか。
音楽を聴くといい気分になるワケ

楽器演奏の敷居が高いなら、音楽を聴くだけでもいいと思います。好きな音楽が流れると気分がよくなるものですが、これにはちゃんとした理屈があります。研究によれば、やはり脳の「報酬系」が刺激されるらしいのです。
「報酬系」はその名のとおり、欲求が満たされたとき、または満たされることが予測されるとき、活性化して「心地よい」という感覚をもたらします。
給料日はもちろん、「もうすぐ給料日だ」と思うだけでテンションが上がるのは、この「報酬系」が働いているわけです。
音楽にもそれと同じ効果を期待できるとすれば、聴かない手はないでしょう。
あるいは「報酬系」のみならず、脳の多くの領域を活性化させることもわかっています。
さらに、音楽には眠っていた記憶を引き出す力もあります。昔よく聴いた曲をたまたま聴いて、当時の情景や周囲にいた人の顔が急に思い浮かぶ、という経験は誰にでもあるでしょう。
このとき、脳内では海馬などの記憶中枢が刺激を受けているわけです。曲によっては「苦い思い出」がよみがえるかもしれませんが、それもまた一興。脳が健全に反応していることを喜ぶべきでしょう。
実際、音楽は認知症の予防や進行抑制、あるいは記憶障害の治療の現場などでも取り入れられています。
新しい曲をどんどん聴いて脳内をドーパミンで満たすもよし、懐かしい曲を次々と聴き直して昔を思い出すもよし。
あまりに身近で気づきにくいかもしれませんが、音楽そのものが私たちにとってたいへんな”報酬”と言えるでしょう。
診療467日目、体の門番その3
2024年4月9日
こんにちは、椎名町駅えがお歯科です。
すべての死に至る病は「のど」から始まる
「体の門番」と呼ばれています
誤嚥性肺炎だけじゃない
のども「認知症」になる
このほかにも、朝起きると胸焼けがする、上を向いて飲み物を飲むとむせる、大き目の錠剤が飲みづらいといった症状も、典型的な「のど力」の低下を示している。
また、液体のほうが固形物よりも飲み込むのがつらいといったことも、意外な症状のひとつだ。これは、液体のほうがのどを通るスピードが速く、反射が追い付かないためである。
西山耳鼻咽喉科医院院長の西山耕一郎氏は、「のど力」の低下の兆候はやはり食事中に現れることが多いという。
「歯が悪くないのに、食事に30分以上かかるようになったら、嚥下機能の低下を疑うべきです。これは、飲み込むのに時間がかかっているために起こります。
また、食中に咳が出たり、食後に声がガラガラになったり、痰が急に増えた場合も、のどの力が衰えている兆候とみるべきです」
身体的な兆候としてはわかりづらいが、「のど仏が下がってくる」のも見逃してはいけない変化だ。
東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科の二藤隆春氏はこう語る。
「のど仏が下がるのは、喉頭が下がっているということです。つまり、のどをつり上げている筋肉や靭帯が伸びてしまっているということです。
そうすると舌もそれに引っ張られて下がるので、口の中にモノを入れて送り込むときにタイミングが取りにくくなります」
のど力が完全に低下すると、今度は逆にむせなくなったり、咳が出なくなってしまう。誤嚥を防ぐ「せき反射」が起こらなくなるためだ。食事も、お粥のようなとろみのついた食事でなければ、口に運ぶのすら億劫になってしまう。
食事は「飲み込みやすいもの」に限られていくため、噛み切りにくい肉や、骨の多い焼き魚には手が伸びなくなるだろう。そうすると動物性たんぱく質が不足し、身体の筋肉量が減少、運動障害を招くリスクが高まる。
「栄養障害や筋肉量の減少がみられると、サルコペニア(身体機能の低下)の問題が深刻化してきます。
こうして身体を動かさなくなっていくと、今度は認知機能の低下も進み、フレイル(生活機能全般の低下)という状態を招くことになります」(前出・浦長瀬氏)
ものが食べづらくなると、認知症が進み、最終的には寝たきりになってしまう――「のど力」低下がもたらす、つらい結末である。
嚥下障害が進むと、「誤嚥」だけでなく「窒息」を起こすこともある。正常にのどが機能していれば入らないような食べ物が気道をふさぎ、窒息して死に至ることもある。
また、特に高齢者が気をつけなければならないのが「脱水」だ。水でむせがちになると、つい水分補給を控えるようになってしまう。
高齢者が一日に必要な水分摂取量は1500mlと言われているが、嚥下障害により500mlも飲み切れないようになると、脱水症状から脳梗塞、心筋梗塞といった重大疾病を引き起こすリスクが格段に高くなる。
「飲み込む力の衰えは、はっきりと飲み込めなくなるまで、本人も周囲も気づかないまま放置されることがあります。
飲み込むという動作は、身体的には非常に単純で小さな動きです。それゆえ、自分の意思でのどを動かせない、いわば『のど認知症』の人は非常に多い」(前出・浦長瀬氏)
のどが衰えてきていると自覚したら、意識的にのどを使うことを心掛けたい。たとえば、飲み物を飲み込んだら、大きく息を吐きだしてみよう。
これにより、自然と誤嚥を防ぐことができる。いつもより大きな声で笑うだけでもよい。カラオケも効果的だ。
自分ののどはきちんと動くのか。日常生活でチェックするのが大切だ。
それは「隠れ誤嚥」ではないですか
あなたも誤嚥している
朝起きると空咳が出たり、のどが渇いたりすることはある。でもそれは年のせいで、食事をしてもむせないし、痰も出ない。夜もぐっすりと寝ているつもりだ。だから、特にのどが弱っているとは思えない。
自分は健康だと信じて疑わない人に、知らず知らずのうちに忍び寄る恐ろしい症状がある。「隠れ誤嚥」だ。
ひとくちに「誤嚥」といっても、2種類のパターンがある。食べ物や飲み物をうまく飲み込めない、本人が自覚できる誤嚥を「顕性誤嚥」という。一方、気づかないうちに唾液や口内の食べかすが気管に入ってしまう誤嚥のことを「不顕性誤嚥」という。
自覚症状があり、周囲も異変に気付くことが多い顕性誤嚥よりも、静かに進行する不顕性誤嚥のほうが深刻な肺炎につながるリスクが高いのだ。
「隠れ誤嚥」がもっとも起こりやすいのは、睡眠中である。寝ているあいだは、気付かないうちに唾液や口の中に残っている食べかすが気管に入ってしまっても、咳などで排出しようとする「せき反射」が起こりづらいのが原因だ。
年齢に関係なく、就寝中にむせたり、咳が出て起きてしまう人がいるが、こうした場合はむしろ防御反応が正常に働いている証拠でもある。ところが年齢を重ねると、せき反射が起こらず、寝ているあいだずっと誤嚥が続いている状態になってしまう。
こうして咳が長く続き、なんとなく風邪が治らないと思っていたら、気づかないうちに誤嚥性肺炎が進行していた、というのが「隠れ誤嚥」の怖さである。
統計上、肺炎で亡くなる人はやはり高齢者に多く、実に95%以上が65歳以上なのだ。
「誤嚥性肺炎は、寝ているあいだに鼻腔や咽頭にもともとある定着菌が気道に落ち込んだり、気道にいる菌が誤嚥を契機に活性化することで起こります。いちばん多いのは、もともと保菌していた肺炎球菌が活性化するものです。
65歳以上の人は、全員が睡眠中に誤嚥をしていると言っても過言ではありません。これは、睡眠中に意識レベルが低下することで、もともと低下しつつある嚥下機能がさらに落ち込むために起こります」(東京医科大学八王子医療センター呼吸器内科教授の寺本信嗣氏)
日常生活に支障はなくても、年齢を重ねれば自分も「隠れ誤嚥」を起こしているかもしれないと疑うのが重要だ。大切なのは、「隠れ誤嚥」自体を防ぐのではなく、肺が細菌感染する体内環境をできるかぎり作らないようにすること。
加齢は、睡眠中の口内環境にも大きく影響する。人間は40代を過ぎると、唾液の分泌量が減って口内が乾きやすくなる。そうすると唾液内の雑菌がどんどん増えていくため、「隠れ誤嚥」で肺炎を引き起こす確率が上昇してしまう。
こうした状況を改善するためには、こまめに水分を摂り、口やのどの乾燥を防ぐ必要がある。
『フケ声がいやなら「声筋」を鍛えなさい』(晶文社)の著書がある、山王病院国際医療福祉大学東京ボイスセンター長の渡邊雄介氏は次のように語る。
「いまの時期は空気が乾燥しています。加齢とともに体内の水分保有量は減ってきますが、これはのども同じです。夏は脱水を意識して水分を摂りますが、より乾燥している冬に水分不足になっている人も多いのです。
のどが渇くと、声帯やのど全体の筋力も衰え、誤嚥性肺炎にかかる確率が上がってしまいます。機械に油を差す感覚だと思って、冬場こそ水分を補給するようにしてください」
いびきは危険なサイン
口内の菌そのものを減らすことも対策の一つ。歯磨きを怠っていると、歯に歯垢(プラーク)が溜まり、固まって歯石となる。
歯垢には、1gあたり1000億個もの細菌が潜んでいると言われ、口腔ケアを怠っていると、それがどんどん口の中で増殖していく。神鋼記念病院耳鼻咽喉科長の浦長瀬昌宏氏はこう語る。
「歯磨きは、誤嚥性肺炎の予防としても重要な役割を果たします。特に寝る前はしっかりと時間をかけて歯を磨くようにしましょう。
ポイントは、食後すぐではなく、10~20分経ってから磨くことです。食後は唾液が多く分泌され、口内の細菌を調整しているからです。
口呼吸で口腔内が乾燥しがちな『ドライマウス』の症状がある人や、細菌の層が舌にこびりつく『舌苔』がみられる人は、細菌が増殖しやすいので特に要注意です」
ちなみに、いびきや逆流性食道炎といった持病がある人は、かなりの確率で「隠れ誤嚥」を起こしていると考えたほうがいい。
これらの持病があり、横向きやうつぶせで寝ている人は、睡眠中に逆流してきた胃酸が気管に入り、炎症を起こすケースが多い。
特に身体の右側を下にして眠っている場合、胃のかたちが変わって胃酸が逆流しやすくなり、咳や胸やけの原因にもなる。とはいえ、あおむけに寝ると口が開き、唾液の誤嚥が起こりがちだ。そのため、「左向き」に寝るのが理想の寝相だといえるだろう。
「むせていなくても、食後に痰が増える、食事を終えるのに時間がかかるようになったといった症状があれば、気づかないうちに誤嚥が進行している可能性があります」(西山耳鼻咽喉科医院院長の西山耕一郎氏)
「のど」が発するサインに敏感になる、これが健康長寿の近道だ。


診療466日目、こんにちは歯神社
2024年4月8日
こんにちは、椎名町駅えがお歯科です。
週末に大阪の歯神社へ行ってきました!
日本で唯一と言われる、歯の神社です。
梅田駅から徒歩10分くらいの繁華街の真ん中に鎮座する鳥居にびっくりしました。
2023年6月10日放送の「ブラタモリ」でも登場した、“歯神社”のご紹介です。

え・・・こちらですよね。恐る恐る近づいてみると、
「歯神社」ありました!!!!

歯神社があるのは大阪梅田の若者向け商業施設「エスト」の裏手。昔、近くを流れる淀川の氾濫で梅田一帯があわや水没…といったことがありましたが、その際にこのお社の御神体であった巨石が歯止めしたことから「歯止めの神様」と慕われるようになり、それがいつしか「歯痛止めの神様」に変化したものと云われています。
もともと「歯」の神様ではなかったんですね。ですので梅田のエスト裏なんてヤングな街にあるのも仕方がないことなんです。エストの裏に歯神社があるのではなく、エストが歯神社の横に建ったのです。この界隈をおばあちゃんがウロウロしていたら、「歯神社」を探しているのかもしれません。
今でも歯神社本殿の前には「なで石」という小さな石(御神体の巨石のかけら)があり、この石をなでて歯の痛いところをさすれば痛みが和らぐと信じられています。

歯神社の主祭神は歯神大神さまで、親しみを込めて「歯神さん(はがみさん)」と呼ばれています。明治時代に入り、近くの綱敷天神社の末社として祀られるようになりました。
歯神社では年に一度「歯神社例祭(通称:歯ブラシ感謝祭)」が執り行われます。参拝者や氏子の一年間の歯の健康が祈念され、神事の後には、古くなった歯ブラシを神様にお返しし新しい歯ブラシを頂く「歯ブラシ授与」という珍しい行事も行われます。
診療465日目、体の門番その2
2024年4月5日
こんにちは、椎名町駅えがお歯科です。
すべての死に至る病は「のど」から始まる
「体の門番」と呼ばれています
誤嚥性肺炎だけじゃない
久しぶりのシリーズものです!
その「のど」の様子は、がんの始まりです

風邪と勘違いして声を失う
東京都在住の斎藤良一さん(62歳・仮名)は3年ほど前、咳が止まらない症状に悩まされた。冬だったので、風邪かと思い放っておいたが、3週間ほど経っても症状が治まらなかったという。
「のどの痛みや声が枯れるような症状もあったのですが、風邪だろうと高をくくっていたんです。
あまりに長く症状が続くので、妻から病院に行くように勧められました。総合病院で内視鏡検査を受けたところ、喉頭がんのステージⅠだと診断されました。
初期だったので、放射線治療でがんを小さくすることができましたが、手術をしたら声を失う可能性もあったと考えるとゾッとしました」(斎藤さん)
のどの不調は見逃されがちだ。咳や痰は風邪と混同され、声のかすれや変調は加齢のせいだと見過ごされる。しかし、多くの有名人たちも異変を見逃し、がんに冒された。
〈2013年のシャ乱Qの結成25周年記念ツアーが終わった後、ツアーの疲れだと思っていた声枯れがあまりにも長く続くので、どうしたものかと思っていました(中略)まさか喉に大病が隠れているなんてこれっぽっちも思っていませんでした〉
音楽プロデューサーのつんく♂氏(50歳)は「新潮45」(’17年2月号)に寄せた手記でそう綴っている。当時、つんく♂氏はツアー前後など、月に一度は大病院の声帯専門の医師の診察を受けていた。
声枯れも〈まあ、ロックシンガーはおっさんになってから、しゃがれ声で渋く歌ってる人も味があるので、そんな感じで生きて行くんかなぁ〉(同前)と、加齢によるものだと勘違いしていた。
しかし、’14年2月に病院で検査を受けたところ、喉頭がんと診断される。’14年10月、声帯の全摘手術を受け、声を失ったのはご存じの通りだ。
’09年5月に他界したロック歌手の忌野清志郎さん。’06年6月末頃からのどの不調に苦しむようになった。病院で診察を受けたところ、喉頭がんと診断される。
一時は復帰公演を行えるほど回復したが、’08年7月に転移が発覚。58歳の若さでこの世を去った。
「『声がかすれる』という症状がある時、最も怖いのは、喉頭がんや下咽頭がんです。前者はつんく♂さんや忌野清志郎さん、後者は『ヒゲの殿下』こと三笠宮寛仁殿下や元衆院議員の与謝野馨さんなどが患いました。
喉頭がんや下咽頭がんは声帯の動きが悪くなりますし、腫瘤によって気道が狭くなりますので、呼吸困難になることもあります」(東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科講師、二藤隆春医師)
喉頭がんと咽頭がんは、字面も似ていて混同しやすい。「喉頭」とは、「のど仏」などがある器官のことで、下部は気管とつながっている。
喉頭の途中には声を出すための「声門」があり、がんを発症し、声を失うことが多いのは、この喉頭がんのほうだ。
「咽頭」とは、鼻の奥から食道にかけての食べ物や空気が通る十数cmの管のことで、下部は食道と繋がっている。この咽頭の下部に腫瘍ができるのが下咽頭がんだ。
のどの不調を感じた時、注意しなくてはいけないのは喉頭がんと咽頭がん以外にも、甲状腺がんなど多数ある。
千葉県がんセンター元センター長で、浦安ふじみクリニック院長の竜崇正医師が語る。
「食道がんの場合、食べ物などが『のどにつかえる』という症状が出てきます。これは食道が狭窄しているか、隆起しているからです。
この症状が出てきた時は、がんは早期ではありません。反回神経という器官にがんが浸潤していたり、その周りのリンパ節に転移している場合、声のかすれが出てくることもあります。これはかなり末期の症状と言えます」
他にも、初期の肺がんでは咳や痰が長く続いたり、血痰が出ることがある。国立がん研究センター中央病院頭頸部外科の松本文彦医師が語る。
「気をつけなくてはいけないのは、ピンポイントで違和感のある部分がわかるケースです。
のどを指差して、『右側のこのあたりに違和感がある』と感じる際は、何らかののどのがんである可能性があります。この場合の進行度はまちまちで、ステージⅠでもこのようなピンポイントの違和感が出ることがあります」
前出・竜氏が話す。
「食道内視鏡検査と上部消化管造影検査(バリウム食道透視検査)という2種類の検査があります。
バリウム検査では早期がんを見つけるのは困難ですが、内視鏡は非常に有効です。特にいまは経鼻内視鏡といって、非常に細く、咽頭、喉頭、食道などすべてをチェックできる検査もあります」
初期のがんは自覚症状がないものが多い。それだけに、のどからのサインは非常に貴重だ。風邪と思い込まず、「もしかして、がんなのでは」と立ち止まってほしい。
「のど力」低下は死に至る病の始まり

最近、食べられなくなったあなたへ
最近、以前よりも食欲がなくなった。あるいは空腹は感じても、食べることがしんどくなってきた。そんな人は、「のど力」が低下して、飲み込む力が落ち込んでいるサインかもしれない。
いくら飲み込む力が大切といっても、嚥下は反射的に起こる動作のため、症状が深刻化するまでなかなか衰えに気づかないのが、むずかしいところだ。
ここで、簡単な「反復唾液嚥下テスト」をしてみよう。30秒のあいだに、何回唾液をごっくんと飲み込めるか測るものだ。このとき唾液がうまく出なかったりする人は、少し水を口に含んでも構わない。
結果はいかがだろうか。年齢にかかわらず、30秒間で6回以上できれば特に問題はない。だが3~5回の人は要注意。2回以下の人は、飲み込む力が低下している「嚥下障害」の可能性があると考えたほうがよい。
「じつは70代くらいまで、嚥下機能が劇的に落ちることはありません。ただ、70代を過ぎて目に見えて落ちはじめると、治すことはかなりむずかしくなってしまいます。
のどの能力が下がりきってしまう前に、『あれっ、最近のどの様子がおかしいな』と感じたうちから、のどの力の低下を疑ったほうがよいでしょう」(神鋼記念病院耳鼻咽喉科長の浦長瀬昌宏氏)
飲み込む力が低下している「兆候」は、さまざまな形で身体に現れる。これを決して見逃さないようにしよう。
「まず唾液の切れが悪くなってきて、のどに溜まってきます。ただこれを唾液ではなく、痰だと思う人が多いようです。『最近のどによく痰が溜まるな』と思ったら、要注意です。
また、声の質も変わってきます。のどに唾液が溜まり、加えて動きが小さくなると、湿声といってこもった声が出るようになります。これは咽喉の力が衰えているサインです」(浦長瀬氏)

診療464日目、体の門番その1
2024年4月4日
こんにちは、椎名町駅えがお歯科です。
すべての死に至る病は「のど」から始まる
「体の門番」と呼ばれています
誤嚥性肺炎だけじゃない

寒さと乾燥が厳しくなる年末年始、特に高齢者はなによりも守らなければいけない器官がある。それは「のど」だ。
のどというと、単に食べ物が通過するところと思う人も多いかもしれない。一方で、暖房をつけっぱなしにして寝たり、乾燥した屋外で長時間過ごしたりすると、すぐに腫れて痛くなる非常にデリケートな器官でもある。

「当たり前のことですが、人間は食べ物を食べてエネルギーを身体に取り込まなければ生きていくことができません。嚥下機能(食べ物を飲み込む力)をつかさどっているという意味で、のどは人間の生命の源ともいえる器官なのです」
こう語るのは、著書に『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』(飛鳥新社)がある、西山耳鼻咽喉科医院院長の西山耕一郎氏である。西山氏は、食べ物を飲み込む力をはじめとして、3つの重要な機能がのどにはあると指摘している。
という、生きていくうえで欠かせない機能があるのが、のどという器官です。のどが健康的に機能しているからこそ、私たちは日々生活できていますし、私は、『人間はのどから衰える生き物』と考えています」
食事、空気、そして会話。体内外のモノを交換するときに必ず通過するのどは、まさに「身体の門番」ともいうべき役割を果たしているわけだが、のどはただの「管」ではない。
身体はのどの周りの筋肉を動かして、この3機能を円滑に進めているわけだが、当然加齢とともにこの筋肉は衰えていく。若いころのようにのどを動かすことができなくなれば、恐ろしい病を引き起こすきっかけにもなる。
神鋼記念病院耳鼻咽喉科長の浦長瀬昌宏氏が解説する。
「のどで食べ物と呼吸の交通整理がうまくいかなくなる。それが『誤嚥』と呼ばれる症状で、気管に異物が入ってしまうことがあります。
若い人であれば『せき反射』といって、せきこんでリカバーすることができますが、加齢で反射が鈍ると、そのまま気管に侵入してしまいます。ここから細菌に感染し、誤嚥性肺炎の原因になるのです」
人間は、一日におよそ500~1000回、飲み込む動作を無意識に行っている。この際、のどの奥では「喉頭蓋」という蓋が気道をふさぎ、そのスキにのどは食べ物や飲み物を食道に送る。わずか0.8秒ほどで、身体は絶妙な連係プレーを繰り返しているのだ。
こののどにポリープがあったり、脳梗塞や認知症の影響で神経伝達がうまくいかず、連係プレーが乱れたりすると、繰り返し誤嚥するようになる。
一度の誤嚥では問題ないが、慢性化すると誤嚥性肺炎に発展するリスクが上がる。日本では毎年10万人前後が肺炎で命を落とすが、高齢者の肺炎のうち7割が誤嚥性肺炎ともいわれている。
後章でも詳述するが、飲み込む力が衰えれば、誤嚥以外にも深刻な症状が出てくる。
モノが頻繁にのどでつかえるようになると、食欲も減退し、栄養障害や消化器系の疾患を引き起こす。栄養不足が続けば、運動障害やうつ、ひいては認知症など、QОL(生活の質)を著しく下げる疾病を招くことになる。
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突如訪れる「窒息」の恐怖
嚥下機能以外の「呼吸」「発声」機能が衰えていくにつれて、高齢者を死に至らしめる病にかかるリスクはどんどん増していく。
東京医科大学八王子医療センター呼吸器内科の寺本信嗣教授は、のどの機能の低下と呼吸の関係についてこう解説する。

「肺は非常にうまくできていて、かつ複雑な臓器です。ふだんの生活で使っているのは、肺の最大容量の約3分の1程度で、大きな息をしてようやく3分の2まで開きます。
ですが、加齢やのどの調子などが原因で、大きな息ができないと、誤嚥によって細気管支が詰まったままの部分が徐々に増えていって気道閉塞が生じる可能性があります」
のどが原因で肺活量が低下してしまうことからも、さまざまな病が引き起こされる。
浅い呼吸が続くと、慢性的な低酸素状態となり、高血圧や高脂血症といった生活習慣病の引き金になる。さらに生活習慣病が重なることで、冠動脈性心疾患などの突然死のリスクも高まると指摘されているのだ。
また、呼吸に関する病気には急性喉頭蓋炎がある。のどの入り口にある喉頭蓋が細菌感染で腫れあがり、のどを塞いでしまう。「窒息」の恐怖も、決して他人事ではない。
年齢を重ねると、お腹や下半身の筋肉がたるむように、のどの筋肉もたるみ、動きが鈍くなる。そうすると、若いころよりもうまく声が出ないということが増えてくる。
健康には一見関係がないと思われる3番目の機能「発声」も、高齢者の身体のバランスを整えるうえで重要な位置を占める。
「発声は声帯を使って行いますが、じつは嚥下とほとんど同じ臓器で声を出しています。そのため、声を出す機会が減れば必然的に嚥下機能も落ちてしまうことになります。
また、カラオケに行ったり友人と談笑したりすることで、人間はストレスを解消し、自律神経のバランスが調整されて身体の血液循環をよくすることにつながります。つまり、声を出すことが全身の健康を守っているともいえるのです」(前出・西山氏)
特にこれからの季節、守るべきは心臓でも脳でもなく、「のど」なのだ。
診療463日目、口内細菌、腸内環境に悪影響
2024年4月3日
こんにちは、椎名町駅えがお歯科です。
口内細菌、腸内環境に悪影響
~洗口液でセルフケアを(グランプロデンタルクリニック銀座 福島一隆院長)~
虫歯や歯周病の原因となる口の中の「悪玉菌」は、飲み込むと腸内環境に悪影響を及ぼす可能性があるという。グランプロデンタルクリニック銀座(東京都中央区)の福島一隆院長に症状や対策について聞いた。
腸内環境を守るためにも口腔ケアを

◇大腸まで届く口内細菌
口の中の細菌は口内細菌と呼ばれ、歯の表面や歯茎、歯と歯茎の境目、粘膜や舌などに約700種、4000億個以上が生息している。その多くは悪さをしない常在菌だが、虫歯菌や歯周病菌といった悪玉菌が増えると周りの菌も影響を受けて口内環境が悪化し、虫歯や歯周病が引き起こされる。
虫歯菌や歯周病菌は、炎症を起こした歯茎の毛細血管から血流に乗って全身に散らばり、さまざまな病気に関連することも知られている。最近は、体内に侵入した悪玉菌が及ぼす健康への影響が注目されている。
飲み込まれた口内細菌は胃酸で殺菌されるが、死滅するわけではない。「口内細菌の約3割は殺菌されずに大腸まで届くとの研究報告があります。中でも強力なのは歯周病菌の『ジンジバリス菌』で、大腸まで到達して腸内環境を変化させるといわれています」と福島院長。
口内悪玉菌が腸に及ぼす影響の詳細はまだ不明だが、「腸内細菌はおなかの調子だけでなく、全身の免疫機構などにも関わるため、口内悪玉菌で腸内環境が乱れると健康にも何らかの影響があると考えられます」。
◇歯のセルフケアを
悪玉菌の体内への侵入を防ぐには、口腔(こうくう)ケアでの除去が必要。ただ、歯ブラシで歯の表面や、フロスで歯間を掃除するだけでは不十分だ。口内で歯が占める表面積は25パーセントで、残り75パーセントの歯茎や舌、頬などの粘膜にも細菌は付着している。
「洗口液や液体歯磨きなどのマウスウォッシュは、歯ブラシやフロスが届かない口の隅々に行きわたり、悪玉菌を殺菌します。毎日のセルフケアは、歯ブラシ、フロス、マウスウォッシュの3本立てを基本に」。毎食後でなくともよいが、就寝前は丁寧なケアを心掛けたい
50歳過ぎたら膵臓がんリスク検査

また、細菌が集まって膜状になったものを「バイオフィルム」という。「口内のバイオフィルムである歯こうは歯磨きで落とせますが、これが固くなった歯石はセルフケアでは落とせません。歯科医や歯科衛生士による定期的なプロケアで除去するとよいでしょう」と福島院長は助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
診療462日目、「ハウスの分類」
2024年4月2日
こんにちは、椎名町駅えがお歯科です。
総義歯患者における義歯への適応力に着目した「ハウスの分類」
ハウス博士は1950年、無歯顎になる予定の患者がどのように行動したか、またその後の総義歯装着に対し、どのように適応したかという視点から患者を分類することを考案し、発表した。
論文の中でハウス博士は、臨床的な印象に基づき、患者を以下の4つに分類した。

① Philosophical mind(理性的なマインド)
② Exacting mind(厳格的なマインド)
③ Hysterical mind(ヒステリックなマインド)
④ Indifferent mind(無関心なマインド)
① Philosophical mind(理性的なマインド
理性的なマインドをもつ患者は、総義歯による治療の必要性について予期しており、歯科医師からの診断や治療に関するアドバイスにすすんで従う。また、歯科医師から義歯の再製をすすめられた場合も同様に従う。
② Exacting mind(厳格的なマインド)
厳格的なマインドをもつ患者は、大抵健康状態が悪く、多くの治療を必要としている。しかし歯科医師からの、保存不可能な歯を抜歯して義歯を装着するという提案には応じようとしない。また、自身の審美的および機能的なニーズを満たす義歯を作ることができるかどうか、歯科医師がもつ能力に懐疑的。多くの場合、追加費用なしで、歯科医師に特別な努力と治療結果の保証を要求する。
③ Hysterical mind(ヒステリックなマインド)
ヒステリックなマインドをもつ患者は、口腔内の健康を軽視している。加えて、義歯恐怖症であり、義歯を装着することに適応しようとしない。このタイプの患者は義歯を装着しようとはするが、見た目や機能が天然歯と同じであることを期待しているため、義歯を使いこなせないことが多い。
④ Indifferent mind(無関心なマインド)
無関心なマインドをもつ患者は、自分のセルフイメージを気にしない傾向があり、食べることを楽しむ意欲もない。このタイプの患者は、義歯を装着しなくても何とか生き延びる。
上記の通り、② 〜 ④ に該当する患者は、無歯顎になることや義歯を装着する経験に対して、理想的とはいえない反応を示す。しかし、多くの患者が該当するタイプでもあるだろう。
どのような対応を行うかは、医院によって異なるものの、今一度、自院の患者に置き換えて考えてみてほしい。
ハウスの分類について再考する必要がある理由
ハウスの分類が発表された後、さまざまな研究者がハウスに倣って理想的な患者について論文を発表した。
それらの中のいくつかの研究では、患者と歯科医師間の協力関係を構築するために必要なことについて研究されている。患者が歯科医師に対して何を求めているかを明らかにしようとした研究では、患者は歯科医師の技術的な能力と同等に、コミュニケーションおよび自身が「理解されている」という感覚を重要視していることが示された3)。
一方、ハウスの分類は患者を単体で捉えるのみで、患者の行動に対する歯科医師の感情的な反応については、ほとんど考えられていなかった。患者を理解するには、歯科医師の性格や主観的な回答、反応も、患者の行動を起こす要因として考慮しなければならない。
診療461日目、最新・80歳で20本残っている人の割合
2024年4月1日
こんにちは、椎名町駅えがお歯科です。
80歳で自分の歯が20本以上ある人の割合が2022年は推計51.6%だったことが昨年6月29日、
厚生労働省の歯科疾患実態調査で分かりました。16年の前回調査から0.4ポイント増えたそうです💡
20本は、入れ歯なしにほとんどのものを食べられる目安です。
調査は22年11、12月、全国で地域を抽出し、2709人に歯科医による診察やアンケートを実施されました。
20本以上の歯がある人は75~79歳で55.8%(前回比0.3ポイント減)、
80~84歳で45.6%(1.4ポイント増)でした。
85歳以上は38.1%で12.4ポイント増加した。
80歳の割合は75~84歳の結果から推計しました。


診療460日目、スクランブルエッグは空気と塩で変わる
2024年3月30日
こんにちは、椎名町駅えがお歯科です。
料理は科学!スクランブルエッグは空気と塩でこんなに変わる

<「飯テロ」写真を続々と繰り出す全米屈指のフード・インフルエンサー、J. ケンジ・ロペス=アルト。この度、美味しく料理するための科学的なコツを400ページ超の本にまとめた>
あなたにとって料理とは何だろうか。心躍る楽しみ? 気の重い日課? 脈々と受け継がれる文化?
米マサチューセッツ工科大学(MIT)を卒業した異色の料理人であり、今や全米屈指のフード・インフルエンサーとなったJ. ケンジ・ロペス=アルトは、そうした答え全てを正解だとしたうえで、こう定義する。料理とは食材と技術をインプット、美味しく食べられるものをアウトプットとする科学だ――。
食欲が生を永らえ、種を保つための生理的欲求であるのに対し、「美味しく食べる」ために料理をするというのは人間だけの行為である。タマネギを切るという場面ひとつをとっても、そこには食味を向上させようという意図があり、そのためには繊維をどのように切断するのが最善か、経験則に従って包丁を使っている。あるいは、最善だと信じている調理法を親から子へ、師から弟子へと伝えている。
ロペス=アルトはそうした手法に「なぜ?」「本当に?」と疑問を投げ掛ける。科学を信奉する者としての資質と知識を礎に、職業料理人として磨いた腕を存分にふるい、嬉々として実験を繰り広げる。
検証結果をレシピへと落とし込んでインターネット上で発表するのだが、撮影も自らが手掛けており、彼がチーフアドバイザーを務める料理サイト「Serious Eats」や彼個人のインスタグラムには、日本のネットスラングで言うところの「飯テロ」と呼びたくなるような写真がずらりと並んでいる。
だが、ネットには形式上の限界がある。もっと子細に根拠を説き、きちんとしたデータも提示したい。見やすくレイアウトしたい。そのような思いから著されたのが『ザ・フード・ラボ ~料理は科学だ~』(筆者訳、岩崎書店)である。
当然のことながら写真以上に文字が多く、グラフや図表もあり、ハードカバーで400ページ以上とずっしり分厚い。しかし、そこに本書の価値はある。ニューヨーク・タイムズ紙が「インターネット・クッキングのオタク王」と称したロペス=アルトの語りは、こだわりとユーモアに満ち満ちている。
あるときは幸せな結婚生活のために「クリーミーなスクランブルエッグ」と「ふわふわのスクランブルエッグ」の両方をマスターしようと奮闘し、実験に胸を高鳴らせ、卵に対する塩の劇的なまでの作用に目を見張る。
またあるときは、家中に染みついたステーキの匂いに辟易する配偶者を横目に、牛肉の焼き付け実験を繰り返す。科学的な正しさで完成した一皿はどれも誇らしげに輝き、読者の心を自宅の台所へと向かわせる。
ただし、ポンドはグラムに換算され料理家の監修も経ているが、それでもやはり食材、分量、道具はアメリカ的だ。骨付きのショートリブ2.3kgなどと目にすれば、日本の家庭料理人は少し腰が引けるかもしれない。それでも案ずることはない。「料理は科学だ」という視点で読み進めれば押さえるべきポイントが自ずと掴め、日常の中で自在に応用できる力が備わる。これぞ科学の普遍性ではないか。
スクランブルエッグの出来上がりを分ける素因
それでは本書で展開される科学をほんの一部、先述のスクランブルエッグの例でご紹介しよう。
スクランブルエッグの出来上がりを分ける素因を見極めるために、ロペス=アルトはまず卵だけで調理してみる。その結果、「食感は最終的な空気の含有量によって決まる」ことがすぐに明らかになった。
かき混ぜながら加熱すると、卵に含まれていた水分が蒸発して消え、濃密なスクランブルエッグとなる。逆に、気泡を抱え込ませるようにそっと焼けば、ふわふわに仕上がるというわけだ。直感的にも理解しやすい部分だろう。
さて、次なる問題は副食材である。溶き卵に生クリームを加えるといった広く知られる工夫は、明確な科学に支えられている。タンパク質の結合が生クリーム内の脂肪分によって妨げられ、やわらかく仕上がるのだ。
そこで、ロペス=アルトはバターと卵黄を加え、仕上げに風味豊かなクレームフレシェを混ぜ込み、3重の脂肪分により究極のスクランブルエッグを完成させた(そう、彼はクリーミー派だ)。ふわふわ派なら、牛乳を足すといい。牛乳中の水分が蒸気となってふわふわ感に寄与する一方、脂肪分がやわらかさをもたらしてくれる。
さらにもうひとつ、仕上がりに重大な影響をもたらすものがある。塩だ。ふわふわ/クリーミーを問わず、スクランブルエッグから汁気が出てげんなりした経験はないだろうか。あれはタンパク質が不必要に強く結合し、水分を外に押し出した結果なのだ。
では、どうするか。塩を加え、しばらく置いてから調理しよう。詳細はレシピともども本書に譲るとして、塩を加えた卵液が次第に暗く透きとおってくるのは、卵料理を美味しく作るうえで実にありがたい変化なのである。
印象的なセンテンスを対訳で読む
最後に、本書から印象的なセンテンスを。以下は『ザ・フード・ラボ ~料理は科学だ~』の原書と邦訳からそれぞれ抜粋した。これらもロペス=アルト流の料理科学。ぜひ役立ててもらいたい。
●This is it, folks: the one thing that more than any other purchase you can make will really revolutionize your cooking (especially if you often cook, or have ever been afraid of cooking, proteins).
(これですよ、皆さん。これさえ買えば、あなた〔特にタンパク質をよく料理する人、あるいは、タンパク質を料理するのが怖い人〕の料理に真の革命を起こせます)
――キッチンに揃えるべきもののひとつとして、ロペス=アルトは「即時式の料理用温度計」を熱く推している。加熱によるタンパク質変性を正確にコントロールするために不可欠なのだ。
●There’s more than meets the eye to the process of roasting starchy vegetables like pumpkin (or, say, sweet potato)—it’s not just about softening.
(カボチャ〔やサツマイモなど〕のようにデンプンの多い野菜の場合、焼くという工程には意外な効果がある。やわらかくなるだけではないのだ)
――あらかじめ素材を焼いておくことには3つの効果があり、ポタージュスープがはるかに美味しくなるとロペス=アルトは力説する。その理屈さえわかっていれば、広く応用できる手法である。
●Now, now, I know some odd folks don’t like eating chicken skin (surely its most delicious feature!), but I’m here to tell you that regardless of whether you end up eating it or pushing it to the side of your plate, it should stay on the chicken while you cook it.
(はいはい、鶏皮は嫌いだとか言うおかしな人がいるのはわかっています〔一番美味しいところなのに!〕。ただ、ぼくが言いたいのは、食べようが皿の端によけようがどっちでもいいから、とにかく調理するあいだは皮をつけたままで、ということだ)
――周知のとおり鶏の胸肉はパサつきやすい。本書では「63℃を超えるともう終わり」だとまで言い切られている。まずい鶏料理と決別するには、断熱材として働く皮を味方につけなくてはならない。
◇ ◇ ◇
こうしたコツの積み重ねが、料理の格をひとつもふたつも上げるのだ。
なお、本書には「卵と牛乳――朝食の科学」「スープ、煮込み――ストックの科学」「ビーフステーキ、ポークチョップ、チキン、魚――ファストクッキングの科学」の3章が収められているが、IACP(国際料理専門家協会)のクック・ブック賞に選ばれた原書は全9章。つまり、残る6章が続編、続々編として刊行を予定されている。
デザート系には萌えないらしく潔いまでにがっつり系のメニューが並ぶが、それもまたJ・ケンジ・ロペス=アルトらしいではないか。


『ザ・フード・ラボ ~料理は科学だ~』
J. ケンジ・ロペス=アルト 著・写真
上川典子 訳
岩崎書店
診療459日目、プロ棋士と矯正
2024年3月29日
こんにちは、椎名町駅えがお歯科です。
矯正に関して興味深い記事を見かけたので、シャアします🤝
藤井聡太の歯列矯正にひふみんが「ちょっと心配」と語る理由
藤井聡太八冠

あまたの偉業を重ねながらも、いまだ齢21。そんな将棋の藤井聡太八冠の「口元」に目下、視線が集まっています。
若き天才棋士が選んだ新たな一手を、“あの人”はどう解説するでしょう。
「歯を入れると頭が働かなくなった」という加藤一二三氏
***
その文言がSNS上に飛び交ったのは去る2月23日の夜。
「徹子の部屋」(テレビ朝日系)の特番に出演した藤井八冠がにっこりと笑ったときでした。
〈矯正している!〉
画面に映った歯の表面にワイヤー器具がついており、〈今まで気づかなかった〉〈私も矯正治療中なので親近感〉
などと大騒ぎが起きました。〈歪んだ前歯で見た目の印象が良くなかったから好手だ〉といった肯定的な意見のほか、
〈痛みや不快感がつきものだから悪手だ〉と対局への懸念を示す書き込みも相次いだそうです。
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「パフォーマンスに影響を与えることはない」
「令和の天才」の奇手に、ネット上は今なおにぎわいをみせている。将棋連盟元理事の田丸昇九段(73)は、
「以前は、棋士を取り上げるのは新聞や専門誌くらいでしたね」と、苦笑いしつつ、
「実績は既に大ベテラン級ですが、まだ21歳。常に人目にさらされている存在ですから……」
全八冠を独占する藤井は現在、56年ぶりとなる「年度勝率記録」更新を見据えています。
歯列矯正の影響が気になるところですが、「対局時に歯痛などがあったら落ち着けないでしょうが、
八冠のようなトップ棋士はそのことさえも忘れてしまうくらいの集中力を持っているものです」
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実際、矯正歯科医に尋ねても、「治療には多少の痛みや違和感は伴いますが、主治医による適切な処置があれば、
パフォーマンスに影響を与えるまでには至らないでしょう」(医療法人イースマイル国際矯正歯科・有本博英理事長)
とのことだから、さらなる躍進に期待が膨らむのだ。
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一方で人生最大の危機そんな中、「ちょっと心配です」 と言うのは、「ひふみん」の愛称でおなじみの加藤一二三九段(84)です。

藤井は3月10日放映のNHK杯準決勝戦で羽生善治九段に勝ち、今年度の勝率も依然、史上最高記録を上回ったまま。
「しばらくは藤井1強時代が続くだろう」との声も聞こえてきます。なのに、なぜ不安視するのでしょうか。
「藤井さんの将棋は相も変わらずの絶好調ですが、棋士にとって歯はとても大事なんです」
そう断じながら、前歯を欠いた元名人は自身の現役時代を振り返りました。
「長考に長考を重ねる私は無意識のうちに歯を食いしばっちゃう。それで歯を失ったの。20年も前の話ですよ。
その後、歯を入れたんだけれども、どうにも頭が働かなくなっちゃった」
この時が「人生最大の危機」だったと言います。
「でも、入れた歯を抜いてもらったら、あらびっくり。以前のように自分でも感動を覚える一手を指せるようになったの」
その体験ゆえ、「天才」の歯列矯正という新手を案じているとのことです。
となれば、さすがの藤井の盤上にも黄信号がともるのでしょうか。
引退から7年がたった今も、「将棋研究のために歯を入れない」と言い切るひふみんは、
「とはいえ、あの慎重な藤井さんが熟慮の末に始めたわけですから、今はつつがなく治療が終わることを願っております」
とインタビューを締め括りました。
「週刊新潮」2024年3月21日号 掲載