診療465日目、体の門番その2
2024年4月5日
こんにちは、椎名町駅えがお歯科です。
すべての死に至る病は「のど」から始まる
「体の門番」と呼ばれています
誤嚥性肺炎だけじゃない
久しぶりのシリーズものです!
その「のど」の様子は、がんの始まりです
風邪と勘違いして声を失う
東京都在住の斎藤良一さん(62歳・仮名)は3年ほど前、咳が止まらない症状に悩まされた。冬だったので、風邪かと思い放っておいたが、3週間ほど経っても症状が治まらなかったという。
「のどの痛みや声が枯れるような症状もあったのですが、風邪だろうと高をくくっていたんです。
あまりに長く症状が続くので、妻から病院に行くように勧められました。総合病院で内視鏡検査を受けたところ、喉頭がんのステージⅠだと診断されました。
初期だったので、放射線治療でがんを小さくすることができましたが、手術をしたら声を失う可能性もあったと考えるとゾッとしました」(斎藤さん)
のどの不調は見逃されがちだ。咳や痰は風邪と混同され、声のかすれや変調は加齢のせいだと見過ごされる。しかし、多くの有名人たちも異変を見逃し、がんに冒された。
〈2013年のシャ乱Qの結成25周年記念ツアーが終わった後、ツアーの疲れだと思っていた声枯れがあまりにも長く続くので、どうしたものかと思っていました(中略)まさか喉に大病が隠れているなんてこれっぽっちも思っていませんでした〉
音楽プロデューサーのつんく♂氏(50歳)は「新潮45」(’17年2月号)に寄せた手記でそう綴っている。当時、つんく♂氏はツアー前後など、月に一度は大病院の声帯専門の医師の診察を受けていた。
声枯れも〈まあ、ロックシンガーはおっさんになってから、しゃがれ声で渋く歌ってる人も味があるので、そんな感じで生きて行くんかなぁ〉(同前)と、加齢によるものだと勘違いしていた。
しかし、’14年2月に病院で検査を受けたところ、喉頭がんと診断される。’14年10月、声帯の全摘手術を受け、声を失ったのはご存じの通りだ。
’09年5月に他界したロック歌手の忌野清志郎さん。’06年6月末頃からのどの不調に苦しむようになった。病院で診察を受けたところ、喉頭がんと診断される。
一時は復帰公演を行えるほど回復したが、’08年7月に転移が発覚。58歳の若さでこの世を去った。
「『声がかすれる』という症状がある時、最も怖いのは、喉頭がんや下咽頭がんです。前者はつんく♂さんや忌野清志郎さん、後者は『ヒゲの殿下』こと三笠宮寛仁殿下や元衆院議員の与謝野馨さんなどが患いました。
喉頭がんや下咽頭がんは声帯の動きが悪くなりますし、腫瘤によって気道が狭くなりますので、呼吸困難になることもあります」(東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科講師、二藤隆春医師)
喉頭がんと咽頭がんは、字面も似ていて混同しやすい。「喉頭」とは、「のど仏」などがある器官のことで、下部は気管とつながっている。
喉頭の途中には声を出すための「声門」があり、がんを発症し、声を失うことが多いのは、この喉頭がんのほうだ。
「咽頭」とは、鼻の奥から食道にかけての食べ物や空気が通る十数cmの管のことで、下部は食道と繋がっている。この咽頭の下部に腫瘍ができるのが下咽頭がんだ。
のどの不調を感じた時、注意しなくてはいけないのは喉頭がんと咽頭がん以外にも、甲状腺がんなど多数ある。
千葉県がんセンター元センター長で、浦安ふじみクリニック院長の竜崇正医師が語る。
「食道がんの場合、食べ物などが『のどにつかえる』という症状が出てきます。これは食道が狭窄しているか、隆起しているからです。
この症状が出てきた時は、がんは早期ではありません。反回神経という器官にがんが浸潤していたり、その周りのリンパ節に転移している場合、声のかすれが出てくることもあります。これはかなり末期の症状と言えます」
他にも、初期の肺がんでは咳や痰が長く続いたり、血痰が出ることがある。国立がん研究センター中央病院頭頸部外科の松本文彦医師が語る。
「気をつけなくてはいけないのは、ピンポイントで違和感のある部分がわかるケースです。
のどを指差して、『右側のこのあたりに違和感がある』と感じる際は、何らかののどのがんである可能性があります。この場合の進行度はまちまちで、ステージⅠでもこのようなピンポイントの違和感が出ることがあります」
前出・竜氏が話す。
「食道内視鏡検査と上部消化管造影検査(バリウム食道透視検査)という2種類の検査があります。
バリウム検査では早期がんを見つけるのは困難ですが、内視鏡は非常に有効です。特にいまは経鼻内視鏡といって、非常に細く、咽頭、喉頭、食道などすべてをチェックできる検査もあります」
初期のがんは自覚症状がないものが多い。それだけに、のどからのサインは非常に貴重だ。風邪と思い込まず、「もしかして、がんなのでは」と立ち止まってほしい。
「のど力」低下は死に至る病の始まり
最近、食べられなくなったあなたへ
最近、以前よりも食欲がなくなった。あるいは空腹は感じても、食べることがしんどくなってきた。そんな人は、「のど力」が低下して、飲み込む力が落ち込んでいるサインかもしれない。
いくら飲み込む力が大切といっても、嚥下は反射的に起こる動作のため、症状が深刻化するまでなかなか衰えに気づかないのが、むずかしいところだ。
ここで、簡単な「反復唾液嚥下テスト」をしてみよう。30秒のあいだに、何回唾液をごっくんと飲み込めるか測るものだ。このとき唾液がうまく出なかったりする人は、少し水を口に含んでも構わない。
結果はいかがだろうか。年齢にかかわらず、30秒間で6回以上できれば特に問題はない。だが3~5回の人は要注意。2回以下の人は、飲み込む力が低下している「嚥下障害」の可能性があると考えたほうがよい。
「じつは70代くらいまで、嚥下機能が劇的に落ちることはありません。ただ、70代を過ぎて目に見えて落ちはじめると、治すことはかなりむずかしくなってしまいます。
のどの能力が下がりきってしまう前に、『あれっ、最近のどの様子がおかしいな』と感じたうちから、のどの力の低下を疑ったほうがよいでしょう」(神鋼記念病院耳鼻咽喉科長の浦長瀬昌宏氏)
飲み込む力が低下している「兆候」は、さまざまな形で身体に現れる。これを決して見逃さないようにしよう。
「まず唾液の切れが悪くなってきて、のどに溜まってきます。ただこれを唾液ではなく、痰だと思う人が多いようです。『最近のどによく痰が溜まるな』と思ったら、要注意です。
また、声の質も変わってきます。のどに唾液が溜まり、加えて動きが小さくなると、湿声といってこもった声が出るようになります。これは咽喉の力が衰えているサインです」(浦長瀬氏)